東京高等裁判所 昭和34年(ラ)858号 決定
一、本件競売期日において競買人和田寅之助の代理人府津羅幸太郎の提出した委任状(記録一〇六丁)によれば、その内容は抗告人主張のとおり競売裁判所、競売事件名及び事件番号、競売物件の所在、地番、家屋番号等の記入のない鉛筆書きの簡単なものであることが明らかであるけれども、競買人の代理人がその授権を証するために提出すべき委任状の形式については特に法令の規定なく、要はこれによつて当該代理人に対する授権を証するに足りる実質上の内容を備えるを以て足るものと解すべきところ、右委任状には、その委任事項として、「私儀岩田氏家屋競売入札に関し府津羅幸太郎を代理人として委任致します」との記載があり、日附及び委任者の記名押印を備えているので、記載事項が簡単であるとはいえ、それが本件競売期日において執行吏に提出されたことと相待ち、本件競買申出についての授権を証し得ないものではないから、これにより代理権を認め代理人による競買申出を許したことは違法でなく、この点に関する抗告理由は採用できない。
二、競売不動産が数個あるときは、競売法による不動産競売に準用される民事訴訟法第六百七十五条の規定により一部の不動産の競落を許さない場合もあるから、そのためには各不動産毎に最低競売価額を定めて個別に競売をなすことをむしろ本則とし、ただそれは法律上の売却条件には当らないから、競売裁判所において利害関係人のため個別競売よりも一括競売を有利と判断したような場合には、利害関係人の合意がないときでも裁量により一括競売の方法によることができるに過ぎない。本件についてこれを見るに、記録編綴の登記簿謄本(一九丁)及び鑑定人杉山宏の評価書(三三丁ないし三五丁)の記載によれば、本件建物四棟は併せて一登記用紙に登記され、従来一括して権利変動の対象とされていたものであり、その内建坪三十二坪八勺の居宅一棟を除く他の三棟はその附属建物であつて、或は他の建物に接続し或は右居宅に接近して建てられ、いずれも建坪三坪に足りない平家建物置又は炊事場に過ぎず、右居宅の利用に便するためだけの小規模な従属建物で、主たる建物である居宅より離して独立の建物として見るときは利用価値は極めて僅少であることが推認されるので、このような軽微な附属建物を主たる建物と区別し各別に評価し各別に競売に附するようなことは、建物全体の効用を発揮する所以でもなく、広く多数人の競買申出を促し、又競買を容易にするようなことにもならず、競売価額の適正を図る目的に合致するともいい難く、むしろ全建物を一括して競売に附するの勝れるに如かずとも考えられ、この点に関する抗告人の主張中にも首肯するに足る部分がないとはいえないけれども、かような場合でも一括競売をなすか個別競売によるかは競売裁判所の裁量に属する事項であつて、本件において仮に一括競売の方法が結果として望ましいものであつたとしても、その方法をとらなかつたことはなお原裁判所の裁量の範囲内であり、これを違法とすることはできない。従つてこの点に関する抗告理由もまた採用できない。
(川喜多 小沢 位野木)